アメリカ大統領選の戦略

ドナルド・トランプはいわゆる「炎上」によってメディアを最大限に活用しています。パブリシティを巧みに利用してビジネスを拡大してきたドナルド・トランプらしい戦略です。「注目されること=売れること」という持論は大統領選に良い結果をもたらすのでしょうか。

一方のヒラリー・クリントンは、前回の大統領選ではインテリジェンスを強調した戦略をとっていました。今回は、女性として社会的マイノリティーを強調する戦略に出ています。何れにしても、両者ともコンセプトを明確にしてインパクトで勝負しています。

さて、オバマの選挙の戦略に関しては多くの情報が公開されています。歴史的勝利を収めたオバマの戦略から学ぶこともあるのではないでしょうか。

オバマのネット戦略

アメリカでオバマ大統領のネット選挙を支えたのは多くのITエンジニアでした。GoogleやamazonなどIT企業のエンジニア40名、平均年齢23歳のメンバーが中核を担ったオバマ大統領のネット戦略部隊。陣営はナビゲーションシステム(Campus)を使ってボランティアの戸別訪問を管理し、民意のデータをクラウドから収集(Optimizer)して分析を行いました。また、複数の掲示板などにも登場し、くまなくアピールしました。土地柄に優位なタレント(例:ジョージクルーニー)を起用して、応援メッセージをもらう等のプロモーション活動を行いました。発信した情報が一部炎上した際には、炎上した経緯の説明と、危機状態にあることを詳しく発信することで20万人の共感を呼び、多額の寄付金を集めました。Twitterでは常に数十万人を動かす効果があり、とりわけテレビ討論の際には1030万人がリツイートしました。当選確実の報告はオバマのつぶやきに対し、85万リツイート、リツイートは波及し10〜20分で数千万人に伝わりました。これはマスメディアよりも断然早いリーチです。

投票率の向上を訴えたミシェル夫人

アメリカでは、浮動票の獲得を目的として、期日前投票への呼びかけを集中的に行うことが一般的です。ミシェル夫人はDMでオバマへの投票を依頼したのではなく、投票に行ってもらうよう依頼しました。投票率の向上を訴えることは、政治家の妻の振る舞いとしてとして、オバマにプラスイメージを与えたのではないでしょうか。

政治にブランディングは欠かせない

本人はもちろんのこと、陣営の関係者全ての振る舞いは、一つの大きなコンセプトに基づいていなければなりません。候補者のコンセプトを比較し、心を打ったコンセプトに投票するのが有権者の行動だからです。コンセプトとは人物を表すイメージ「人柄」だと考えることができます。本人の「人柄」を見える化することが、まさにブランディングの醍醐味といえます。